源氏物語 第3帖「空蝉」

第2帖「箒木」で、空蝉と(強引に!)関係を結んだ光源氏でしたが、その後、空蝉が拒絶するので、かえって諦められなくなってしまいます。

なんとか画策して再び紀伊守の屋敷を訪れた光源氏は、空蝉と、彼女の継子である軒端荻(のきばのおぎ・空蝉の年老いた夫の娘なので、空蝉と年は近い)が、碁を打っている様子を、物の隙間からこっそり覗き見(=垣間見・かいまみ)します。

覗き見しながら、美人だけど品がない軒端荻より、見栄えはしないが品のある空蝉の方がいいなぁなんて思ったりする光源氏

そして夜、空蝉の寝室に忍び込むのですが、勘付いた空蝉は逃げてしまい、光源氏はそばで寝ていた軒端荻と関係を持ちます。「空蝉じゃない!」と気付いたとき、「人間違いだ」とか言えないしなあと、「あなたに会いに来たのですよ」と言ったりして。。。

 

現代の価値観で判断してはいけないと思いつつ、光源氏の態度にはしばしば、えー?! となってしまいます。ここも、人間違い? しかも、そのまま一晩過ごしちゃうの??? と、ちょっと衝撃でした笑。

 

この章では、参考書、佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』に書かれていたことが、とても勉強になりましたので引用しておきます。

人妻を堂々と盗み、悪びれる様子がないのはどうかと思うが、これは光源氏が帝の子という並の身分でないことによる。(中略)

しかしその後、空蝉は光源氏の求愛を拒み続けた。これは夫に申し訳ないという倫理観からくるものではなく、受領(ずりょう)の後妻である身の程をわきまえた判断であった。空蝉は娘時代ならよかったと思いつつ、親を亡くし没落した今となっては、光源氏と対等の関係を望むべくもないという現実を知っている。空蝉に一夜の慰めを求めた光源氏の振る舞いを見ても、光源氏中流層の女性に対する見下した眼差しは明らかだ。光源氏に心引かれながらも、身分差から拒むしかない空蝉の人生のつらさ、つたなさを物語は描こうとしている。

 

やはり、この物語は、光源氏のラブストーリーというより、様々な女性たちの人生模様を描いたお話なのかもしれません。

それにしても光源氏め。

いま実際にはもう少し先の章まで進んでいるのですが、おいっ!と言いたくなることもしばしば笑。まあ、舞を舞ったりすると神々しいまでの美しさで見た人が感涙したりするほどの人物なので、仕方ないと思いつつ。でも、物語の地の文で「浮気性で呆れる」とか「女好きで困る」みたいなコメントが挟まれるので、作者・紫式部光源氏の態度に批判的な立場なのかなと感じるところは意外でした。