源氏物語 第4帖「夕顔」
光源氏、17才。この頃よく通っていた恋人は六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)。
ある日、従者・惟光(これみつ)の母である乳母を見舞った時のこと、隣家に咲いている夕顔の花を手折らせようとすると、花を載せるための扇が届いた。光源氏はその家の女主人・夕顔に心引かれ、身分を隠して通うようになる。
その後、光源氏が夕顔を廃墟のような屋敷に連れ出した折、美しい女のもののけが現れ、夕顔は急死してしまう。生前、夕顔はついに身分を明かさなかったが、彼女はやはり頭中将の恋人だった人であった。
この章の主役は、夕顔。(19才)
突然出てきて、突然死んでしまう人という印象でしたが、夕顔と頭中将の間に生まれた子供(玉鬘・たまかずら)は光源氏の養女になって今後の物語にも関係してくるようです。
そして、忘れてはならないのが、六条御息所。(24才)
夕顔は父親が亡くなったことで後見を失った中流階級「中の品」の女性なのに対して、六条御息所は前皇太子の妃であったという上流階級「上の品」に属しています。この章では、この2人が身分差だけでなく、性質の面も含めて対照的に描かれますが、光源氏は夕顔にぞっこんで、恋の勝負としては完全に夕顔に軍配があがります。でも、住まいも侘しい夕顔はそのまま死んでしまうし、光源氏に構ってもらえない六条御息所もせつないし、2人とも可哀想。
私はずっと、夕顔を殺したもののけは、六条御息所の生霊だと思っていたのですが、それは間違いで、ここの場面でのもののけに関しては誰とは明記されてないのですね。
参考書(佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』)によると、
六条御息所の生霊とするのは、室町後期に唱えられた説
なのだそうです。
父親を失い、「上の品」から「中の品」に没落した夕顔。(空蝉と同じ境遇。)
その上、頭中将に愛され娘までもうけたのに、頭中将の正妻に脅されて身を隠さなければならなくなり、光源氏と知り合ったのはその仮住まい中。
夕顔は光源氏が顔を見せた後も、自らは素性を明かそうとしない。名乗ったところでどうしようもないという夕顔の思い、保護者のいない貴族女性が生き抜くことの困難さがうかがえる。
佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』より
改めて源氏物語に触れることで、今まで抱いてきたイメージがだいぶ変わってきました。世界的にも有名な、この古典文学の“すごみ”がようやく少し、わかってきたかなぁと思います。