源氏物語 第6帖「末摘花」

第6帖「末摘花」の巻は、光源氏の活躍を描く本編に対して、番外編の巻のようです。

時間的にも、第4帖「夕顔」の後からお話が始まっていて、第5帖「若紫」と並行して進行していきます。

末摘花が、そうとうな引っ込み思案で、光源氏がアプローチしてもなかなか反応がなく、その後も進展がスローペースであったため、

光源氏が)末摘花と出会ってから関係をもつまでに、「5若紫」の物語がそっくり入る。

佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』より

そうです。

 

番外編というだけあって、藤壺との密通・妊娠、若紫の誘拐(あえて誘拐と言いたい笑)と、深刻なエピソードが続いた前章「若紫」に比べて、少し軽いといいますか、コミカルな印象がありました。

特に、光源氏が新たな恋の相手を求めて末摘花の住む屋敷を訪ねて行ったとき、「何かある」と勘付いた頭中将が跡をつけていたのは、とても面白かったです。

 

末摘花 が、どんな女性かといいますと、

常陸宮(ひたちのみや)の娘で血筋はいいけれど、今は父宮が亡くなり落ちぶれてしまっています。極度に引っ込み思案なだけでなく、古風で不粋。

さらに特徴的なのはその容姿で、長く垂れ下がった赤い鼻を持っています。(鼻先が赤いことから、ベニバナの異名「末摘花」と呼ばれた。)

そんな末摘花に、光源氏は落胆してしまうわけですが、貧しい暮らしを気の毒に思い、以後、生活の面倒を見るようになります。

 

(末摘花の)個性的な容姿だけが問題だったのではない。(中略)光源氏は、末摘花が古風で不粋なことに失望したのだ。彼は空蝉と末摘花を比べ、容姿よりもたしなみ深い振る舞いが空蝉の魅力だったと思い出すのだった。

同上、書籍より

 

でも、自邸に帰ってから、10才くらいの少女・若紫相手に、自分の鼻を赤く塗って「私の顔がこんな風になってしまったらどうしますか?」なんてふざけてるところは、なんか光源氏、嫌な奴。と思ってしまいました。