源氏物語 第7帖「紅葉賀」

光源氏、18才の秋。もうすぐ、桐壺帝が、その前の帝である一院(いちのいん)の長寿の祝いを行うため、一院が住んでいる朱雀院に行幸する催しがある。しかし、藤壺はその式典には参加できないので、桐壺帝は、特別に宮中で試楽(しがく・リハーサル)を催した。

翌年2月、藤壺が予定日から大幅に遅れて皇子を出産。その子は光源氏にそっくりであった。

その年の秋、桐壺帝は、藤壺中宮にした。

 

この章のメインは、政治のお話。

桐壺帝は光源氏が臣下ではもったいないと感じており、光源氏によく似た皇子を次の東宮に立てたいと思う。天皇外戚(母方の親戚)が政治を動かした時代、東宮になるにも強力な後見が必要だ。宮家出身の藤壺は身分の面で申し分ないが、藤壺の親戚は皇族。名誉職のような官職につくことはあっても、摂政関白となって政治にかかわることができない。そこで皇子の後ろ盾にすべく、藤壺を女御から最も位の高い中宮という地位につけようと桐壺帝は考えた。

佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』より

藤壺は、弘徽殿女御(桐壺帝の妃の1人で現・東宮の母親、右大臣の娘)を飛び越して中宮になってしまったので、弘徽殿女御はかなり怒っていました。

この弘徽殿女御という人、光源氏の政敵なわけですが、光源氏のことが大嫌いで、皆が光源氏の舞に感動している中、「美しすぎて神にさらわれそうだ、怖い」などと皮肉ったり、光源氏を偏愛しすぎだと帝に文句を言ったり、なかなか人間臭くて、物語的には面白いです。

 

そして、この章には、妙な小話が挟まっていまして、なんと! 60才近い年齢だが色恋に関しては現役という上級女官=源典侍(げんのないしのすけ)を光源氏と頭中将が取り合うという、、、 完全にコメディなお話です。

取り合うって言っても、光源氏は好奇心でちょっとちょっかいを出し、頭中将はそれを知ったから手を出して、ある晩、光源氏が源典侍といるところにやってきた頭中将が、わざと怒った振りをし、頭中将だと気づいた光源氏もあえて応戦、掴み合いで互いにぼろぼろになって大笑い。全部がお芝居みたいなエピソードでした。

源氏物語』の中に、こんなコメディ要素があるとは知らなかったので驚きました。やっぱり、不義の子が生まれるなんて深刻な展開なので、敢えての挿話なのかなと思ったりしました。