源氏物語 第13帖「明石」

【あらすじ】

前章「須磨」から続く暴風雨がようやく、おさまります。その明け方、夢に故桐壺院が現れ須磨を離れるように告げました。すると翌朝、明石の入道が迎えにやって来たため、光源氏は明石に移ります。

明石の入道は光源氏を手厚くもてなし、また、かねてより貴人と結婚させたいと願っていた一人娘(明石の君)の話を光源氏に聞かせます。やがて文をやり取りするようになり娘に心引かれた光源氏は、明石の君と契りを交わしました。

都では、弘徽殿大后が体調を崩し、朱雀帝も夢で故桐壺院に叱責された後、重い眼病を患います。これは報いだと考えた朱雀帝は、光源氏を京に呼び戻すことにしました。この頃、明石の君は懐妊していましたが、光源氏はいつか必ず都へ迎えることを約束し、帰京します。

帰京後、光源氏権大納言に昇進したのでした。

 

高校生の頃、漫画『あさきゆめみし』を読み、この明石の君についてのお話しがとても印象的だった記憶があるのですが、今回聴いてみると意外とあっさりしているように思えました。ちゃんと覚えているわけではないのですが、確か、「紫の上がいるのに明石の君にも手を出すなんて許せーん」と思う一方で、「明石の君の思いがせつないよー」と悶えながら読んだような気がするのですが、改めて、『源氏物語』本文を読んで(聴いて)みると、光源氏はすごく紫の上に気を遣っているし、明石の君は、遠方にいて寂しかったしちょっと物珍しく興味も湧いたから手を出した相手という感じがしました。

結婚は父親の入道がさせたいだけで、明石の君本人も、身分が違いすぎるからと、基本、消極的なんですよね。この控えめな感じが、グッとくるような気はしました。明石の君を女優の荻野目慶子さんが演じていらっしゃり、とても好きな女優さんなことも相まって、明石の君のファンになってしまいました。

 

当時の結婚は、女の親が承認し、男が女の家に通うのが原則だった。一方、男が呼び寄せることができる女もいる。「召人(めしうど)」といって、主人と愛人関係にある女房であり、対等な関係ではない。光源氏は明石の君の元に通う気はなく、召すことにこだわった。明石の君は、光源氏の従者・良清が自分の妻にと思っていた身分の人で、光源氏とはつり合わないからだ。(中略)結局、光源氏が折れて、召人待遇ではなく、男が訪ねる通常の結婚形式になり、明石の君の地位は保たれた。しかし、いつまた蔑ろにされるかと明石の君の不安は消えない。

佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』より

身分の違いがこれほど大変なことだったとは。明石の君が気の毒で、ますます気になってしまいます。この後、光源氏の子供を産むことで明石の君の運命はさらに思いもしなかった方向へ進んでいきそうです。