源氏物語 第11帖「花散里」

とても短く、あっさりとした印象の章です。

佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』には、

物語が大きく動く「12須磨」へと続く、嵐の前の静けさのような短編である。

と、書かれています。

 

【あらすじ】

光源氏25才の夏、故桐壺院の妃の1人、麗景殿女御を訪ねた。妹(花散里)は、光源氏の恋人で、姉妹は桐壺院亡き後、光源氏の庇護を受け、同じ邸でひっそりと暮らしている。

訪問の道中、中川のあたりで昔の恋人の邸を見つけ、歌を贈ったが、やんわりと拒絶された。

女御の邸では、麗景殿女御と昔を懐かしんで話し合い、その後に花散里を訪れ心を慰めるのであった。

 

この章では、橘の香りとホトトギスの鳴き声が効果的に使われているそうです。ホトトギスも橘も「昔を思い出させる」ものという約束事があり、それを知っている人なら皆が共有できるイメージがお話に奥行きを与えているようです。

 

花散里 は、この章で初登場した人物ですが、この後、度々登場すると思われます。

心変わりしない花散里は、光源氏に生涯大切にされ、後に光源氏やその息子夕霧を支えることになる。

佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』より