源氏物語 第19帖「薄雲」

悲しい出来事の多い章です。

【あらすじ】

明石の君が断腸の思いで娘を手放すことを決意。

光源氏が迎えに来て明石の姫君は二条院に引き取られて行きました。

翌年、光源氏の義父・太政大臣が亡くなります。その後も天変が相次ぎ、そして、3月、病に臥していた藤壺崩御光源氏は悲嘆に暮れます。

藤壺の49日が過ぎた頃、夜居の僧都(よいのそうず・帝の祈祷僧)から実の父親は光源氏だと聞いた冷泉帝は、実の父を臣下にしておくわけにはいかないと、光源氏に譲位の意向を示しますが、光源氏はそれを固辞しました。

 

明石の君が子供を手放す決意をするところも切ないのですが、光源氏の迎えが来た時に、姫君が「お母様も車に乗って」と袖を引くところが、たまらなく悲しかったです。せめてもの救いは、紫の上はきっと優しい母親になるだろうと思われること。姫君のおかげで、明石の君に対する紫の上の感情も少し和らいだ様子なのもよかったなと思いました。

 

いよいよ光源氏の息子・冷泉帝が出生の秘密を知ったわけですが、「帝が知らないでいたら神仏の咎めを受けるかも」という故藤壺僧都の心配、「父を臣下しておくなど申し訳ない」という冷泉帝の反応、それぞれ、昔の人は信心深いんだなぁくらいにしか考えてなかったのですが

出生の秘密を知った冷泉帝は、14歳だった。母(藤壺)を亡くし、悲しみに暮れているときに、自身が桐壺帝の子ではなく不義の子と知るなど、多感な年齢だけに受けたショックは計り知れないものがある。嫌になって気持ちが荒んでもおかしくはないが、冷泉帝は思いやりのある孝行息子だった。両親を恨まず、父を臣下として扱ってきたことを申し訳なく思い、帝位を譲ろうとした。

佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』より

やっぱり、冷泉帝がいい子だったんですね。いやぁ、それにしても光源氏ってラッキーな奴だなぁと思ってしまいました。でもまあ、この後、自分も妻に裏切られますもんね。全ては前世からの因縁なんでしょうか。

真実を知った帝が親を大切に思ってくれたことで、光源氏は隠れた帝の父となったのだ。互いに口にはせずとも、親子の連携は不動のものとなり、光源氏は朝廷での立場を一層強め、栄華を確立していくことになる。

佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』より

いずれにしろ、今後ますます、政治的には栄華を極めていくことになりそうです。