源氏物語 第16帖「関屋」

こちらも番外編と言って良さそうです。短く、久しぶりに空蝉が登場します。

【あらすじ】

光源氏が京に戻ってきた翌年のこと。長く夫の赴任地である東国に暮らしていた空蝉が、帰京することになりました。途中、逢坂の関で、石山寺参詣に向かう光源氏の一行とすれ違います。光源氏が懐かしさから空蝉へ文を送り、2人は感慨にふけったのでした。

その後、夫が亡くなり未亡人になった空蝉。当初は親切であった継子たちは次第に冷淡になり、さらに継子の1人である河内守(元の紀伊守)が言い寄るように。空蝉はそれを避けるため、出家し尼になったのでした。

 

この頃、光源氏は29才。空蝉と出会ったのは17才の時で、2人は12年ぶりに再会したのだそうです。再会と言っても

空蝉一行は木々の下に車を引き入れ、身分の高い光源氏が通り過ぎるのを待たなければならなかった。

佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』より

と、もちろん直接会って話したりするわけではないのですよね。

光源氏は、空蝉の弟、右衛門佐(かつての小君)を呼び寄せて、「空蝉を迎えに来た」とか言うんです。調子のいい、嫌なヤツ(と、私は思ってしまいました。)

今さらながら、光源氏との決定的な身分の差を痛感する空蝉。2人の恋はもとより展望の見えないものだったが、逢坂の関ですれ違い、後に空蝉が尼になったことで、完全に終わりを迎える。

受領階級の女・空蝉の物語は、『源氏物語』のいわばサイドストーリー。現実的な結末を紅葉で彩り、美しく描いたところに、作者・紫式部の空蝉への思い入れが感じられる。

佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』より

 

光源氏って、帝の子で、容姿端麗、学問も音楽も美術も才能に長けた人物で、女に関心があって浮気癖のある困った人とも言われていますが、何かにつけ皆がベタ褒めする、とにかくすごい人。でも、なんか調子良くて、結局、“良いとこのぼんぼん”といった感じがしてしまうのです。。。が、それに比べ、彼を取り巻く女性たちの悲喜交々、その生き様のバラエティ豊かなこと。やはり、この部分が『源氏物語』のかなり大きな魅力なのかなと思いました。